本日読んだ本は、

上原春男さん著の『抜く技術』。

上原春男さんは、海洋温度差発電の世界的権威。

NPO法人OPOTEC(海洋温度差発電推進機構)の理事長も務めている。

 

 

日本人の深い特性として、

自らは一歩引いて相手を立てる。

「私を抜く」ことによって対人関係を丸く柔らかくする知恵。

それを「抜く技術」とした。

「抜く」をキーワードに様々な分野を見渡すと、

ものの考え方や生き方のテンプレートになっていると気づく。

 

熱力学の分野には、

「熱から有効な仕事を取り出すためには、ムダがなくてはならない」

という大原則がある。

 

これは「カルノーの定理」と呼ばれる。

「熱効率100%の仕組みはありえない」

エネルギーのロスがあって初めて、動力がもっとも効率的に得られる。

 

エネルギーとはそもそも、

押すエネルギーと引くエネルギーの二つから成り立っている。

そのどちらかが欠けても有効に発揮されない。

これからの社会では、この「抜く」が最大のキーワードになると考えている。

 

海洋温度差発電は、

海の表面の温かい海水と、深層の冷たい海水の温度差を利用して、

電気エネルギーを取り出すシステム。

海水から電気を取り出す方法も、

「抜く(引く)」という発想なしには生まれなかった技術。

 

既存のエネルギー、たとえば原子力発電などは押すに強く、引くに弱いエネルギー。

エネルギーを作り出すことに重点がおかれすぎていて、

無効エネルギーをどうやって捨てるかについては考慮されていない。

 

やたら忙しがっている人に仕事のできる人は少ない。

忙しいと称する人の大半は時間の使い方が下手でムダが多い。

何故、ムダが多くなるか。力の抜き方が下手なのです。

 

仕事のできる人は、力を入れるべきポイント、

抜いていいポイントの見極めやメリハリのつけ方がうまい。

その結果、さほど忙しそうにも見えないのに、

高水準の仕事を効率よくこなすことができる。

 

いい仕事をするためには集中力が必要。

集中力は、力みや緊張感から生まれてくるものではない。

力みがないからこそ集中力が高まる。

 

文章も簡潔をもってよしとなす。

文章も「省く」ことが大切で、省けば省くほどよくなる。

 

落語は「間」が命の話芸。

抜く技術の呼吸を体感するには格好の対象です。

いかに言葉をつなげるかではなく、いかに言葉を区切るか。

饒舌よりは、省略や凝縮という「引き算」が話や文章を効果的にする。

 

店の商品陳列も同様で、

何を並べるかではなく、何を並べないかを考える。

小売り店はともすると、売りたい商品を並べたがるが、

お客さんの買いたい商品を並べるのが肝心で、

売れないもの、お客の買いたい度が低いものから抜いていけばいい。

コンビニが伸びてきたのは、この方法を徹底したから。

 

成長しよう、いい仕事をしようと思うなら、

多少のムダや損を惜しんではいけない。

 

お金も同様。

お金は貯めることでふえるが、

使うことでもっとふえる性質をもっている。

お金は生き物です。

たまって動かないと腐ってしまう。

使って動くところにはさらにお金が集まってくる。

 

与え好きの人は「抜く」ことがうまい人。

人に仕事をまかせられるのは、「自分を抜く」ことをためらわない証拠。

 

【感想】

この本をよんで、空手の突きを思い浮かべました。

より強い突きを出すためには、力を込めて前に出すのではなく、

逆の引手の方を強くする。

力を抜くことで、より強い突きができる。

 

素人が見ると、押し出す方のエネルギーばかりに目が行きます。

でも本質は、見落としがちな引く方のエネルギーが影響してくる。

本の中では、様々な観点から「引く技術」「抜く技術」が紹介されています。

「捨てる側から発想する」というのも感銘を受けました。

 

目標達成の方法でも、

「やることリスト」ではなく、「やらないことリスト」を作ることで、

やることが明確になるというものがあります。

 

日常生活でも、ついついやることを増やしがちです。

時間は限られているので、「省く」ことを考える必要がありますね。

最近、読んだ本の中では、久しぶりにヒットしました。

おススメです。